商標よもやま話

HOME» 商標よもやま話 »商標よもやま話 1 「商標登録出願における指定商品について(1)」

商標よもやま話

商標よもやま話 1 「商標登録出願における指定商品について(1)」

「商標戦略」という言葉をときどき耳にする。「商標戦略」という言葉から一般的にイメージするのは、どのようなネーミングを採択するかということである。たとえば、英語風のネーミング(ABC)にしようか、カタカナで行こうか(「エービーシー」)、あるいはまた自社のフィロソフィーを消費者に伝えるにはどのようなネーミングにしたらよいかなどである。

商標戦略において、ネーミングの重要性は言うまでもないが、見落としがちになるのは、商標登録出願においてどこまで広く指定商品(または指定役務)をおさえるかという問題である。この問題は、どちらかと言えば地味な問題であるため、ついつい見落としがちになる。しかし、商標権の権利範囲の確保という面からは、見落とせない実務上の重要な問題である。

ここで、商標法という法律の復習をしておくと、商標権という独占権の範囲は、「商標」と「指定商品」の2つの要素で決まるということである(商標法第27条)。

「指定商品」の面から言えば、指定商品の範囲が広いと権利範囲も広いということになる。もちろん、指定商品の範囲を広げることは商品区分数を増加させることになり、商品の区分数を増加させることは費用(特許庁へ支払う印紙代+特許事務所へ支払う弁理士費用)の増加を招くことになる。たとえば、ファッションブランド志向の商標の場合、「衣服」(第25類)だけをおさえるなら、1つの区分(第25類)に出願するだけでよいが、将来的に「サングラス」(第9類)や時計(第14類)の分野にも進出する可能性があるということであれば、区分数を増やす必要があり、その分だけ初期投資が増加することになる。

よくある話が次のようなものである。「海のものとも山のものとも分からない、新ブランド「ABC」をまず「衣服」(第25類)に出願し、商標登録にも成功した。その後、ビジネスもまあまあ順調に推移している。そろそろ、同じブランド名(ABC)で、「サングラス」も販売しようかというときに、商標調査をしてみたら、他人がすでに、指定商品「サングラス」(第9類)について商標「ABC」を出願していた。」

その他人が、貴社の「ABC」ブランドの成功を見て、先取り的に「サングラス」に「ABC」商標を出願したのかどうかは定かではない。しかし、先願主義下においては、当然あり得る話であり、貴社の「ABC」ブランドがルイヴィトンのような超著名な商標でない限り、その他人の出願は合法的なものとして登録される可能性が十分にあるのである。

もっとも、やたら指定商品の範囲を広げても、登録後3年以内に、その指定商品にその商標を使用しなければ、その指定商品が不使用により取り消されるというリスクと応訴費用の負担が生じることも考慮に入れなければならない。

結論から言えば、指定商品の範囲をどこまで広げるかは、貴社の新ブランドに対する将来ビジョンや費用対効果に依拠するのであって、唯一の正解というものはない。しかし、夢でもよいから、弁理士という専門家に将来ビジョンを明らかにし、その段階での適切解を求めて弁理士と相談するのが望ましいと思われる。(文責 向口 浩二)

2016/03/01

商標よもやま話

HOME

最新情報

事務所概要

業務内容

弁理士紹介

判例研究(水曜会)

活動報告

English

求人情報

朋信のつぶやき

リンク

お問合せ

管理画面