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商標よもやま話 4 「世間感覚とのズレ」


商標よもやま話 4 「世間感覚とのズレ」

 

先日、商標の出願が初めてというお客様の出願のお手伝いをさせて頂いた。商標とは何かという話から始まって、商標登録の意義、手続、費用等を説明させて頂いた。その後、出願する商標や指定商品を特定し、ようやく出願は完了した。出願が初めてというお客様なので、書面による報告のみならず、電話でも出願が完了したことを報告させて頂いた。その際にその方からの質問を受けて、筆者は、「はっ」とさせられた。以下のような会話内容である。

 

依頼者:「登録はいつ頃になりますか?」

筆者:「うまく行けば、5~6か月というところです。」

(筆者としては、意外と早いでしょうという趣旨であった。なぜなら、筆者がこの業界に入った25年前は、この種の質問に対して、「早くて2年~3年、遅ければ4~5年でしょうね」という回答をしていたからである。)

依頼者:「えっ!?そんなに時間がかかるのですか。やはり、お役所仕事ですね~。」

筆者:「お役所仕事? いやいや、これでも随分と早くなったんですよ。それに、独占権という強大な権利を付与することになるので、お役所としても、先行商標の調査や審査に十分時間をかける必要がありますから。。。云々」

(筆者としては、お役所の肩を持つつもりはないが、今日出願して明日登録という訳には行かない事情を了解しているから、ついついお役所の肩を持つような説明になってしまうのである。)

依頼者:「わかりました。要は、忘れた頃に何か通知があるということですね?」

筆者:「忘れた頃? まっ、そういうことです。」

 

電話でのやりとりを終えて、筆者はしばし思ったのである。「そうか、5~6か月の審査期間が早いという感覚はこちら側の感覚であって、世間は決して早いと感じていないということか。そりゃそうだ、インターネットの時代、書面情報は瞬時にお役所に到達する。いくら審査に時間がかかると言っても数か月というのは、このご時世遅いということになるのであろう。1つの業界に長く所属していると、業界常識に染まってしまい、知らぬ間に世間の感覚とのズレを生じさせてしまうのであろう。そう言えば、商標同士が似ているかどうか(商標の類否)(権利範囲の広狭)の問題などにしても、この頃のお役所や裁判所の判断は世間の感覚とかなりズレてしまっているおそれがある。そして、筆者はそのようなズレをズレと感じることもなくなりつつある。これは恐怖である。」

 

商標出願の依頼者がふと漏らす素朴な質問は、世間感覚とのズレを筆者に認識させてくれる貴重な機会であると思った次第である。(文責 向口浩二)

2016/04/21

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