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商標よもやま話
商標よもやま話 2「指定商品について(2)-食べるラー油は食べ物か?-」
商標よもやま話 2「指定商品について(2)-食べるラー油は食べ物か?-」
将来の事業を見据えた、指定商品(指定役務)の区分・範囲の重要性を前回申し上げた(商標よもやま話1)。しかし、指定商品の記載においてより重要なのは、核心となる商品(役務)が適切に保護されているかという問題である。
例えば、通常のラーメン店の場合に確保しておくべき権利は、「(調理済み)ラーメン」(第30類)という商品ではなく、「ラーメンの提供」(第43類)という役務(サービス)である。通常のラーメン店が誤って前者の第30類の権利を取得した場合には、せっかく取得した権利が無意味なものとなる。それどころか、登録商標を第30類の商品に使用していないと理由で、商標登録が取り消される恐れもある(商標法第50条 不使取消審判)。さらに、本来欲しい権利が他人に取られてしまうという結末を招くことにもなりかねない。
指定商品をどのように特定するかは、時に難しい問題でもある。特に、新しいコンセプトの商品の場合、どのように商品を特定するかは、弁理士も非常に悩むところである。
この点に関連して、職業柄、筆者が気になっていたのは、数年前にヒットした「食べるラー油」である。「食べるラー油」は、ラー油という調味料(第30類)として権利が取られているのか、キムチのような加工野菜(第29類)として権利が取られているのか、という疑問である。
今回、このコラムを書くにあたって、特許庁のデータベースで調べてみたところ、この商品は「揚げにんにく入りのラー油を使用した調味料」(登録第第5336492号)として登録されていることを知った。そうなの?食材じゃないの?ということで、さらにネット情報を種々あたってみたところ、「食べるラー油」は「調味料」のようでもあるが、ご飯の「副食」としても利用されているようである。いまいち、はっきりしない。
こうなったら、一度、買ってみるしかないということで、食材と調味料が充実している近場のスーパーに寄ってみた。ところが、醤油や酢が置かれている調味料コーナーには「食べるラー油」が置かれていない。店員さんに尋ねて案内されたのが、鯛味噌や缶詰などが置かれている副食コーナーであった。な~んだ、やっぱり、「食べるラー油」は食べ物じゃないの?
家に帰って、ご飯にかけて食べてみた。私好みの食べ物であった。「調味料」か「食材」かという商標上の問題はさておき、まんまと○○社の商標戦略にのせられた格好である。(文責 向口 浩二)