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商標よもやま話 5 「パロディ商標」


商標よもやま話 5 「パロディ商標」

 

東京出張のお土産に、「東京ばな奈 みぃつけたっ」という菓子を買った。東京駅の土産店に段積みされている定番の人気商品である。「東京ばな奈~」という撃的なネーミングが人気の一因のようである。大阪へ向かう帰途の新幹線の中で、「これほどの人気であれば、パロディ的な商品が出てくるかもしれない。しかし、『東京』を『大阪』に置き換えただけの『大阪バナナ~』とかのネーミングはあまりに安直過ぎてあり得ないだろうなあ」などと思いつつ、気になって、新大阪に着くなり土産店に寄ってみた。

 

な、なんと、「大阪プチバナナ、もーらった!!」という菓子が売られているではないか。あまりにストレートなパロディに驚いた次第である。特許庁のデータベースで調べてみたところ、「東京ばな奈~」は東京の会社が権利者であり、「大阪プチバナナ~」は大阪の会社が権利者であった。そして、2007年頃に、両者間で係争事件があったようだ。

 

こうなれば、「東西バナナ戦争」というタイトルで、このコラムを書くのもおもしろいかもしれない、と思っていた矢先に今度は、高級時計ブランドの「フランクミュラー」(スイスの会社)がそのパロディ商標と思われる「フランク三浦」(大阪の会社)と争っているとのニュースが入ってきた。2016年4月12日付の知財高裁判決によれば、「両商標は非類似であって、かつ出所混同も生じさせない」とのことである。(なお、この判決を受けて、特許庁は再度、「フランク三浦」の商標登録の有効性を審理することになると思われるが、本日現在、まだ結論は出ていない。)

 

パロディ商標と言えば、2013年頃に世間を騒がせた「面白い恋人vs白い恋人」事件が思い出される。商標登録の面から言えば、「面白い恋人」側はその商標登録を特許庁に求めたものの、最終的に拒絶された。一方、「大阪プチバナナ、もーらった!!」は最終的に商標登録が認められている。「フランク三浦」は商標登録の有効性を争っているところである。いずれにせよ、これらのパロディ商標はその商品化に前後して、「商標登録」(特許庁のお墨付きを)を求めている。パロディ商標といえども、商標法上これを拒絶する理由が見当たらない場合は登録されることになるからである。もっとも、パロディ商標が商標登録されることと、そのパロディ商標を付した商品が市場で本家商品と出所混同を生じさせるかどうかということは別問題であるから、「商標登録」=「パロディ商品の販売OK」の完全なお墨付きではない。完全なお墨付きではないが、パロディ商品会社にとってはあった方がよいお墨付きということになるのであろう。

 

筆者が釈然としないのは、「権威」を風刺せんとするパロディストが、暫定的であれ、「権威」のお墨付きを得ようとする構図である。パロディ商標ならパロディ商標らしく、商標登録などを頼りにせず、堂々と「パロディ道」を歩んだらいいのではないかと思うのである。さらに言えば、パロディ商品のリスク回避や低減のために、商標登録制度という公的制度が利用されるのはいかがなものかということである。

 

などと偉そうなことを言ってみても、我が身を振り返ると、五十歩百歩のことをやっているのである。パロディ商品を販売したいという相談を依頼人から受ければ、まずは商標登録出願をして少なくとも商標登録を得ておいた方が賢明ですよとアドバイスをするのである。さらには、本家ブランドとの類似・混同・公序良俗違反等を巧みに回避するための種々の工作を一緒に考えたりするのである。依頼人を目の前にすると、なんとかしてあげたくなるというのが、哀しいかな、代理人の業(ごう)のようである。(文責 向口浩二)

2016/05/19

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