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商標よもやま話 11 「たかがネーミングされどネーミング」(お茶編)


商標よもやま話 11  「たかがネーミングされどネーミング」(お茶編)

 

唐突ではあるが、以下は何のランキングか。

1.生茶

2.おーいお茶

3.伊右衛門

4.綾鷹

いずれもよく目(耳)にする緑茶飲料の銘柄である。これは人気のランキグでもなければ、売上高のランクキングでもない。

 

実は、商標(ネーミング)を構成する言葉の強さのランキングである。「強さ」と言うと語弊があるかもしれないので、「商品との距離」と言うことにしよう。4番目の「綾鷹」より、3番目の「伊右衛門」の方が、2番目の「おーいお茶」より「生茶」の方が、商品「お茶」との距離が近いということである。

 

商標法上の登録可能性の観点から、上記のランキングの意味を説明すると以下のようになる(説明の便宜上、「お茶」という商品の普通名称も加える)。

0.お茶(商品の普通名称そのもの):

指定商品「お茶」に商標「茶」や商標「おちゃ」は登録できない。なぜなら、そのような言葉が独占されると(商標登録され商標権という独占権が発生すると)、第三者は不便極まりないからである。

 

1.生茶(説明型ネーミング):

「生茶」は「生茶葉を使用した緑茶」という製法に由来するネーミングのようである。「生茶」は「生茶葉」という原材料や製法を普通に表す言葉に近いので独占に適さないと言える。一方で、「生茶葉」という普通の言葉に近いとはいえ、「生茶」は厳密に言えば新しい言葉(造語)であり、独占させてもよいとも言える。ぎりぎり路線のネーミングであり、登録の可否については見解が分かれそうである。

 

2.おーいお茶(説明+イメージ型ネーミング):

「お茶」という言葉が入っているが、「おーい」という言葉は、お茶そのもの性質や製法とは無関係である。商品の内容を直接的に説明するものではなく、なんとなく雰囲気を暗示するにとどまる言葉は登録可能である。

 

3.伊右衛門(既存の言葉を使用したイメージ型ネーミング):

「お茶」と「伊右衛門」とにどういう関係があるのか?と疑問に思う人がいる程に指定商品「お茶」との関係は遠い。指定商品「お茶」との関係では登録上の問題は生じない。このネーミングは製茶老舗の創始者の名前に由来するようである。

 

4.綾鷹(イメージ型ネーミング):

「綾」と「鷹」という言葉を新たに人工的に結合させた言葉(造語)である。製造元のホームページには、「綾鷹」とは「高貴な存在の象徴となっている『鷹』という語は、同時に“貴重な茶葉”という意味でも使われていた歴史があり、その『鷹』と、貴重で上質な茶葉を“織り込んだ”という意味の『綾』という語の組み合わせ」であるとの説明がなされている。造語であるから、このネーミングには登録上の問題は全く生じない。

 

商標登録の可否の観点からは、上記の例の中で悩ましいのは「生茶」(説明型ネーミング)である。この型のネーミングは種々の背景事情(造語性の程度や著名度等)によって登録の可能性が変わってくる。「生茶」は登録になったが、「フラバン茶」(flavanはお茶の原材料名)は登録にならなかった。ビールの分野で言えば、「スーパードライ」は登録になったが、「本生」は登録にならなかった。(なお、ここで取り上げた「お茶」と「ビール」の事例は、筆者の前職時代に若手の弁理士N.R氏がアイディアを提供してくれたものである。)

 

以上のことはあくまでも商標法上の登録の可否の問題である。すなわち、ネーミングの候補が決まってからの問題である。事業家にとって関心があるのは、売り上げ増に繋がるネーミングというものがあるのか、あるとしたらどういうネーミングなのかということであろう。これはブランドマーケティングの問題である。ブランドマーケティング的には、「たかがネーミング」ではなく、「されどネーミング・・・」であろう。

 

ところで、筆者は来たる11月24日(木)に「ブランディングのための商標戦略」という中小企業向けのセミナーでお話しをさせて頂くことになっている(18:30時~20:30時、於「大阪産業創造館5階研修室 A・B」)。セミナーでは、「ブランドマーケティング」と「商標登録」の両方の視点から、ネーミングの妙味を探りたい。誠に恐縮ではあるが、セミナーの宣伝になってしまった次第である。(文責 2016年11月 向口 浩二)

2016/11/15

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