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55.【明確性】 平成25年(行ケ)第10063号 審決取消請求事件


【事  件】 平成25年(行ケ)第10063号 審決取消請求事件

平成25年11月28日判決言渡

【関連条文】 第36条第6項第2号(明確性要件)

 

1.事件の概要

 不服2011-15352号の審決の取り消しを求めた。

 

2.経緯

平成19年 7月17日 分割出願

 (原出願:平成14年 4月26日 (優先日:平成13年10月9日))

平成23年 4月14日 拒絶査定

平成23年 7月15日 拒絶査定不服審判請求

平成25年 1月21日 請求棄却審決

 

3.争点

本願発明の記載は明確であるか。

 

4.本願発明

 【請求項1】 炉壁間距離測定手段を用いて、コークス炉炭化室の任意の高さにおける長さ方向複数位置の炉壁間距離をコークス製造毎に測定することによって実測炉壁間距離変位線を求め、

 前記実測炉壁間距離変位線に基づいてカーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均すことにより前記実測炉壁間距離の平準化変位線を求め、

 前記実測炉壁間距離変位線と前記平準化変位線とによって囲まれた面積の総和をコークス製造毎に求め、

 前記面積の総和の変化に基づいて、炉壁状態の変遷を診断することを特徴とするコークス炉炭化室の診断方法。

 

5.本件審決の理由

・実測炉壁間距離の平準化変位線を求めるために行う「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載が明確であるとはいえないため、第36条第6項第2号に適合しない。

 ・平準化変位線は一義的に決まるものではなく多数の可能性があり得る。明細書の説明では、平準化変位線を一義的に定めることができない。

 ・平準化変位線は、本願発明に係る診断方法の信頼性を大きく左右する核心的な主要部であるために、「発明の課題が達成される程度に明確」であるとはいえない。

 

6.原告主張

 ・特許請求の範囲に記載される技術的思想たる発明は、1点の実施態様のみを含むものではない。

 ・特定の方法や指標を発明特定事項として請求項に付け加えることにより発明を限定的なものとすることと、発明が不明確であることとは全く関係がない。

 ・平準化変位線に関する具体的な均し方によってコークス炉炭化室の診断結果に大きく影響を与えるものでない。すなわち、請求項の記載によって、本願発明の課題が解決される。

 

7.被告反論

 ・本願明細書の記載によれば、「炉壁自体の移動や欠損による変位」を分離して「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」ことが発明特定事項である。

 ・原告が提示した甲24(計算報告書)は、本発明の一実施態様とは言えない。

 

8.裁判所の判断

 ・「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」との記載の技術内容自体は明確である。

 ・「カーボン付着や欠損による炉壁表面の変位を均す」ための具体的な方法等を発明特定事項としていないから本願発明が不明確になるものではない。発明の解決課題及びその解決手段、その他当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項(特許法施行規則24条の2)は、特許法36条4項の実施可能要件の適合性において考慮されるべきものであって、発明の明確性要件の問題でない。

 ・原告の甲24(計算報告書)によって示された方法が、本願発明の方法に該当するか否かの被告主張は、明確性要件とは直接関係ない。

 ・以上により、第36条第6項第2号に適合しないとした審決は誤りである。

 

以 上

2018/01/09

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