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判例研究(水曜会)
34.【事件】平成23年(行ケ)第10269号 -審決取消請求事件-
【関連条文】第29条第2項
1.事件の概要
不服2010-4625号の審決の取り消しを求めた。
2.経緯
平成13年 5月 7日 出願(特願2001-136135号
平成21年 9月14日 手続補正
平成21年11月30日 拒絶査定
平成22年 3月 2日 拒絶査定不服審判の請求(不服2010-4625号)
および補正
平成23年 7月12日 拒絶審決
平成23年 7月22日 審決謄本送達
3.争点
本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたか否か。
4.結論及び理由のポイント
(1)原告の主張(取消事由2)
I/Oマネージャは、複数のドライバ間を縦方向(階層間)にアクセスすることはあっても、本願発明のように、横方向にデータを送受信する機能はなく、本願発明のインターフェースプログラムとはまったく別のものである。よって、I/Oマネージャを引用文献に適用し、本願発明の構成とすることはできない。
(2)被告の反論
引用文献には、ピン接続されたドライバ間におけるデータの伝送の具体例として、I/Oマネージャ等で伝送することが記載されている。
引用文献には、I/Oマネージャを経由してドライバ間でIRP(I/Oリクエスト)をやりとりする手段が、ドライバ間で情報をやりとりする手段のうちの一つであることも開示されている。
したがって、審決における「I/Oマネージャ」に関する周知技術の認定に誤りはない。そして、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明に上記周知技術を適用することによって容易に想到し得る。
(3)裁判所の判断
I/Oマネージャは、複数のデバイスの間におけるデータの受け渡し(送受信)を仲介(制御)するものではないから、本願発明の「インターフェースドライバプログラム」には相当せず、このようなI/Oマネージャを引用文献に適用したとしても、本願発明の構成には至らない。
5.コメント
プログラムの発明においては、構成要素は機能で表現され、概念的なものとなる。よって、今回の特許庁のように、機能のみに目を向け(IOマネージャによるドライバ間のデータの送受信)、拒絶理由を構成することは十分に考えられる。
今回、裁判所は、IOマネージャの本来の機能(階層間の入出力要求の伝達)から、周知技術の範囲を「階層間の入出力要求の伝達」にとどめ、審決の判断を誤りとした。
(IOマネージャでは、各階層において、IDを書き換えることはあっても、データをドライバに合わせて書き換えることはしない→本願発明のデータ処理手段は持たない)
このように、プログラムの発明においても、ものの発明と同様に、文献から認定できる周知技術の範囲を限定して反論することは、有効である。